巻物に描かれた絵はその後のことを描いていない。
このまま嘉さんが力をつけてくれれば、大丈夫だってことには変わりはないんだろうけど……
手首に巻かれた朱色の糸をじっと見つめた。
「でもこの糸がある限り私は嘉さんの……その、妃候補なんだよね?」
「ああ。だが、お主は一回その申し出を断ろうとしたろう?それが厄介な事になってしまっている」
無理やり帰ろうとしたあの時。
何かに引き戻されるような強い力を感じたのは……もしかしてそのせい?
「言霊に背いたことで力同士が引き合うようになってしまった。互いが嫌悪し合えばそればますます増して離れられなくなる」
「そう、なの?」
自分が色々やらかしていることが発覚して、どんどんと小さくなっていく。
嘉さんが怒るのも無理もない。
力を貯めようとしてたのにお嫁さん候補なんか見つけて、ややこしいことになって力が1回奪われたんだから。
ごめんなさい……と、小さく呟くと嘉さんの耳がピクリと反応した。