ドンドンと足音を立てながら近づいてくるのが分かる。
スパァンと襖が開くのと同時にごくんと水ようかんを飲み込んだ。
「伽耶!!なぜそんな奴に俺の水ようかん食べさせてるんだ!!!」
「嘉様落ち着いてくださいってばあ!!」
「落ち着いていられるか!!なんであんな童に!!」
「……お前らはもう少し静かにすることができんのか!」
ピシャリと伽耶ちゃんが言い放つと嘉さんはムスッとして口を閉じた。
オロオロとしながら男の子は部屋の隅へと移動する。
部屋に入ってきたかと思えば、最後の一口を食べようとした私の手を掴んで嘉さんはその水ようかんをパクリと食べる。
怒ってはいるけど少し満足そうな顔をすると、尻尾がふわりと揺れた。
目が合うと少し乱暴に掴んでいた私の手を離す。
そして何も言わずに軒下の元へと向かいドサッと座り込んだ。
……この水ようかん嘉さんのだったんだ。
申し訳なさと、ご馳走様の気持ちが入り交じりながらも、お茶を啜る。
「お腹も落ち着いたか、千代」
「うん」
「さて……ではゆっくり話すとするか」
伽耶ちゃんが立ち上がって食べたお皿をお盆に片付け、机を綺麗にしてから小さな棚から何やら古い巻物を取り出した。