怒りのオーラが少し和らいだ時、顔を上げて私の目をじっと見つめたかと思えば私にゆっくりと近づく。


私の目の前に来るとその場にしゃがみ込み、朱色の糸が付いた左手をそっと持ち上げて――


そっと私の手の甲にキスを落とした。


すこし熱い……でも優しい感覚が手の甲に感じる。


すると朱色の糸からキラキラと光が放たれ、その光は嘉さんの体に吸い込まれていく。


1つだけ大きい光の粒が嘉さんの頭の上にゆらゆらと揺らめくとパチンと弾ける。


シャララ……と音を立てながら消えていた耳と尻尾が現れ、髪も元の輝きを取り戻した。


わざとらしいため息をついて、嘉さんはグイッと私の腕を引っ張る。


悲鳴も上げる余裕もなく、倒れ込むと嘉さんの顔がスレスレの所にあった。



「童……お前わざとじゃないだろうな?」


「へっ?」


「分かってて拒否したんじゃないだろうな」


「何も分かってないですっ!」



すると額に響くような痛みが走る。


つぅ……今度は一体何が……



「よく覚えておけ。お前の全て、そしてその力は俺のものだ!勝手に俺の力を奪おうなど考えるんじゃないぞ!」



痛みの正体は……嘉さんの頭突き。


思いもしなかったその攻撃に思わず顔をしかめる。