やけにひんやりとした風が、寝起きの体を覚ますように撫でていく。
ヒュッと風を切る音を聞きながら、恐る恐る目を開ける。
真っ白な雲海に登り始めた太陽がキラキラと眩しく輝いていた。
あまりの美しさに、身を乗り出すようにしてその光景を見つめた。
「綺麗……」
ぽつりと呟いた感想に、嘉さんが勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
その顔を私に見せつけたくてここに連れてきたって言うの?
よく分からないなあ。
そんな中でも、体の中を柔らかい何かが通り抜けていく感覚に心が洗われていく。
「人間界にも、間(ハザマ)が存在するのだな。この前見て、この俺でさえも言葉を失った」
嘉さんの言葉に私も頷いた。
空間の間は怖かったけれど、ここは違う。
地上と天空の間という人間界にある神秘的な場所。