やれやれと首を横に振ると、お腹の辺りでモゾモゾと何かが動く。
ん???これは???
くすぐるようにお腹から胸へと上がってくる何かに、思わず笑いが出てしまう。
「ふふは、くすぐったいってば〜!」
一人で勝手に笑い出した私を見て、二人の言い争いが止まっていた。
モゾモゾと動く何かは、私の胸からひょこりと顔を出す。
あ、すっかり存在忘れてた。
可愛らしい顔で私の胸に埋もれるのは――狐の姿をした伊鞠くん。
戦いの間もずっとそこにいて息苦しくなかったかな。
よしよしと頭を撫でると嬉しそうに顔をすり寄せてくる。
「……伊鞠。お前そんな所で何してる」
「??」
嘉さんの声に首を傾げると、少し濡れた鼻先を私の顎に押し付けてきた。
くっ……!!なんだこの可愛すぎる生き物は……!!
ニヤニヤしそうな顔を必死に抑えていると、戒哲が小さくため息をついた。
「この勝負……敵多すぎるだろ」
そんな言葉は私の耳に届くこともなく、キューと可愛らしく鳴く伊鞠くんをギュッと抱きしめた。