ぽすりと小さな音を立てて倒れた先は、銀色の髪が鼻先に当たりくすぐったいあの感覚が私を包んだ。
大して長い時間離れていたわけでもないのに、この感覚にじわりと嬉しさがこみ上げてくるのは気のせいかな。
妙にうるさく跳ねる心臓を抑えて、温もりに甘えるように額を押し付ける。
そっと顔を上げれば、怒りを顕にした嘉さんの顔がそこにあった。
驚いている私なんかには目もくれず、戒哲に威嚇するように低い声で問う。
「国を騒がせたんだ。さっさと指示を出しに戻ったらどうだ」
今にも引っかきそうな勢いで構える嘉さんを、私は慌てて止めに入る。
本来の敵はもう倒したと言うのに、なぜか嘉さんの戦闘の構えは消えていない。
強引に嘉さんの腕の中から抜けて、両手を広げて2人の間に壁を作った。
「戦いは終わったんだからもう少し穏やかになりましょう!」
「なあ、小娘ちゃん。こいつがあんたと契を交わした奴?」
「え、あ……うん」
後ろからそう聞かれて、振り向きつつ頷くと手首に巻きついた糸が現れる。
ほう……とその糸をしみじみと見つめた戒哲が、くいっと私の手首を掴んだ。