この場に及んで冗談なんて言っている暇はない。


距離を詰めようものなら、火の鳥は高く高く飛び上がる。


それを追いかけようと嘉さんは刀を振るうけど、その切先は届くことはない。


でもなぜか嘉さんからは焦りを感じることはない。


そんな嘉さんに火の鳥も、動き出す。



「ふん。この空中戦で勝ち目がお前なんぞにあるとでも思ったのか?この若造め!!」



力強く鳴きながら回旋しながら鋭いくちばしを向けて、嘉さんに襲いかかってきた。


咄嗟に避けるけれど、小さな竜巻が巻き起こる。



「くっ……!!」



目を細めた嘉さんに火の鳥がすかさず炎の塊を吹いた。


切り裂いた炎の欠片がこっちに降り注いで来る。


叫びそうになるのを必死に堪えて走って逃げる。