私の気持ちを察したのか、小さく首を横に振った。
しっかりと私を見つめるその目は、迷いもなく私を捉えていた。
『私は兄さんを止めたい。それができるのは、巫女の血を引くあなたにしかできないの』
「兄さん……?」
『戒哲兄さん。あなたをここへ攫ってきた誘拐犯』
出された名前に思わず目を見開いた。
でもよく見れば、女の子の目元は確かに戒哲と似ている。
あんな奴にこんな可愛い妹が……“いた”んだ。
霊になってもまだ、兄のことが心配で……私に?
『兄さんはあんな人じゃないの。世界を変えたいだなんて嘘。兄さんは、騙されて動かされてる』
「騙されてって、一体誰に?」
『ここ数年で国へやって来た魔術師達だと思うの。変な結界を張ったり、怪しげな集団を作っては何か行ってる。でも、何をしているのかよく分からない』
「そんな人達にあなたのお兄さんは何を吹き込まれたって言うの?」
自分の思い描く国を作るだとか言って、私の力を得ようとしていた。
でも、それが騙されていてやっていた事なの?
というか……私が巫女だっていう事は誰から見ても分かるような事なのかな。