どうにかしてここから逃げ出さなきゃ。
そう思って辺りを見渡していると、ガサリと音が響く。
後ろから着いてきた女の子に向き直ると、女の子が一気に距離を縮めてきた。
じっと私の顔を見つめてくると、ほっと小さく安堵の息をつき微笑んだ。
そのままスッと消えたかと思えば、伊鞠くんが急に浮かび上がる。
はっとすると柔らかい光が伊鞠くんを包んでいく。
柔らかな表情を浮かべた伊鞠くんは、徐々に狐の姿へと姿形を変えていく。
光が消えたと同時に、ゆっくりと降りてくる。
「あなたは一体誰なの」
伊鞠くんへと腕を伸ばして、その身をしっかりと受け止めると気配の感じる方へと言い放った。
ゆらゆらと揺れる不思議な風の塊を小さく睨むと、先程の子が現れた。
『敵じゃないから安心して。実態を持たない私にはこうやって自然から力を借りるしかないの』
「実態がないってつまり――」
『私はあなたの目にしか映らない、この世界をさ迷う者よ』
そう言って悲しそうな笑みを浮かべて、後ろで手を組んだ。
見た感じでは12歳前後ぐらいで、まだこんな幼いっていうのに……