敵か味方かも分からない人に見つかるのは恐ろしい。
すぐ横にあった小さな部屋に転がり込んで、息を潜めた。
近づいてくる足音にドキドキしながら、その声に耳を傾ける。
「いたか?!」
「いや……」
「全く手のかかる人間の小娘め。そう遠くへは行けないはずだ。紅漣(グレン)様が気づかれる前に片付けるぞ」
慌ただしく去っていくその足音にほっと息をつきながら、伊鞠くんの頬をそっと撫でた。
絶対、何が何でも伊鞠くんを連れて帰ってみせるんだから……!!
気持ちを奮い立たせ、静かに部屋を抜け出す。
どうやら、ここは私の味方は存在しない。
そして、もう私が逃げ出したことはもうバレているらしい。
この情報が得られただけ、かなりの報酬だ。
でも、どうしたらいいんだろう。
とりあえずこの建物内から出れれば、自由が効くはず。
庭園の茂みに隠れるように、逃げ込む。
この庭園の、この塀をよじ登って抜け出せれば話が早い。
でも伊鞠くんを抱き抱えたままとなると……ちょっと厳しい。
塀をじっと睨んでいると、ふわりと優しい風が吹き抜けていく。