「見捨てないでよ……お願い!僕、ちゃんと頑張るから……だから、お願い、置いていかないで!」



いつもと違う様子に戸惑いつつも、涙を堪える伊鞠くんをそっと抱きしめた。



「大丈夫。私はここにいるから。一緒に嘉さんの所へ帰ろう。ね?」



私の胸に顔を押し付ける伊鞠くんの頭を撫でて、耳元で優しく伝えると、小さく頷いた。


さらに大きく揺れた地面を力強く踏みしめて立ち上がる。


ぐらりと傾く伊鞠くんを支えるけれど、なぜかその体に力を感じられない。


すると伊鞠くんから暑い熱が伝わってくる。


はっと思って、伊鞠くんを胸から剥がして顔色を見る。


額にびっしょりとかいた汗と、真っ赤に染まった頬。


誰がどうみても、伊鞠くんが苦しそうな状態に伊鞠くんを抱き上げた。


後ろから再び低い唸り声が大きくこだまし凄まじい速さで闇が迫ってくる。