しばらく睨むと視線を逸らして、大きな声で叫ぶ伊鞠くんにビクリと肩が揺れた。


そんな私を無視してズンズンと歩いてくると、また手を乱暴に掴むとそのまま引っ張って先へと進んで行く。


微かに揺れが続く道は、きっと伊鞠くんの集中力が切れつつあるからなんだろう。


息が苦しいようなそんな感覚を我慢しながら、引っ張られるままに着いていく。


何もしてあげられない。


自分の無力さを改めて感じていると、伊鞠くんが小さく鼻をすすった。


さっきの戦いで怪我をしたのかと慌てて伊鞠くんを見ようとするけれど、それを振り払うように伊鞠くんが顔を背けた。


それと同時にまた地面がぐらりと揺れる。


地響きがやけに大きく聞こえてくるのは、危ない証拠じゃないと思いたい。


伊鞠くんの集中力を切れさせたくないけど、ここは急ぐしかない。


声をかけようと口を開けたけど、その前に伊鞠くんがそれを遮った。



「私は!嘉様みたいに力はない!力がないに等しいくらいなのに、なのにお前は私を見て安心してくれた!期待には添えられないかもしれないのに!」



そう言い放つと急に立ち止まった伊鞠くんにぶつかり、伊鞠くんを下敷きにして倒れ込む。


ばっと起き上がり、伊鞠くんに再び謝ろうとするけれど、その前にきゅっと袖を掴まれた。


震えるその体はあまりにも小さくて、か弱い。


それでも私の目を見つめて、離さなかった。