消えるだなんてそんなことある?!


だってさっきあんなに目を輝かせていたっていうのに。



「だ、だから……はぐれないようにしっかり手、握ってるんだぞっ……」



小さく震える声を必死に誤魔化そうとしている伊鞠くんだけど、尻尾が警戒しているようにピンと立っていた。


簡単に抜けだける方法だと思っていたけれど、伊鞠くんにとってかなりの負担がかかった道だということを知る。


責任と恐怖と戦いながら、私のために何とかしようと頑張ってたんだ……


きゅっと下唇を噛み締めた次の瞬間、地面が大きく揺れる。


パラパラと黒い塵が降り注ぐ中、道の下から何かが這い上がってきた。


小鬼のような妖が3匹現れると、伊鞠くんが手を離してその妖に向かって走り出した。


何か力になりたいけれど、どうしていいのか分からず伊鞠くんの背中を見つめる事しかできない。


懐から何かを投げつけると眩しい光が弾ける音と共に現れる。


一気に距離を縮めて、小鬼の顔を引っ掻くと伊鞠くんに怯んだ小鬼達が、暗闇の中へと吸い込まれるように消えていった。


肩で息をする伊鞠くんに咄嗟に謝る。



「こんな目に合わせてご――」


「ここから出てから謝れ!」



泣き出しそうな声でピシャリと言い切ると、キッと睨まれた。