そんな伊鞠くんを見ていると、ん。とぶっきらぼうに手をさし伸ばしてきた。
首を傾げてその手を見つめるけど、何か起こるわけでもない。
今もしかしたら力を溜めているのかもしれないし、邪魔しちゃだめ。
そうしてじっとその手を見つめていると、手がぴくぴくと震え始める。
「い、いつまでそうやってるんだ!!」
「だって力溜めている最中なんでしょう?邪魔しちゃいけないと思って」
「この鈍感娘!!手を繋げと言ってるんだ!!」
「え?」
伊鞠くんは顔を真っ赤に染めながらそっぽを向く。
でも差し出した手は、私の返事を待つようにそのままにしていてくれた。
「これ以上はぐれて、嘉様の所に帰れなくなったら私の責任になるのだから。はっ早く行くぞ」
頬を小さく膨らませて私を睨みつけると、無理やり私の手を掴み立ち上がらせた。
そのまま小さな手に引っ張られるように、穴の中へと進んでいく。
小さな勇者がやって来て私を助けてくれた、そんな気分に小さく笑った。