そう思うと悔しさと申し訳なさでいっぱいになっていると、扉の隙間を吹き抜けてくる風に鼻を動かした。


顎に手を添えて唸りながら考えると、手を合わせて何かを念じる。


でも何も変化は現れる事はなくて、ただその姿を見つめることしかできない。



「どうやら……狭間にいるようだな」


「狭間?」


「空間と空間の歪みを利用した場所だ。作り出した奴にしか場所が分からない」


「で、でも!帰れるんでしょ……?」



胸を握りしめながら恐る恐る聞く。


伊鞠くんは表情を変えないまま私を見据えた。






「――不可能に近い」


「えっ?!」



返ってきてほしい言葉とは真逆で、思わず身を乗り出した。


そんな私にため息をついて獣耳を掻く。



「出られた所で場所が定かではない。つまり帰り道が分からない状況と同じ状況になる。そんな中で敵の目を避けてどうやって逃げる?無理だ」


「う、うそ……」



い、伊鞠くん呼んだ意味全くもってなかった?


この状況において伊鞠くんがいることの方がやばいんじゃ……戒哲にバレたら何をしてくるか分からない。


ガックリと肩を落とすと、伊鞠くんが私を睨んだ。