もがっ!と苦しそうな声を上げるけど、私はお構いなしにぎゅと抱きしめる。


この暖かい温もりにどれだけ触れたかったことか。


ああ……暖かい。



「くっ苦しい!離れ――」


「もうちょっとだけ」



伊鞠くんの言葉を遮り、さっきよりも少し強い力を込めて抱きしめた。


抵抗を諦めた伊鞠くんの尻尾がへたりと下に垂れた。


私が満足して離した頃には、その顔は不機嫌な顔に出来上がっていた。



「ごめん、ごめん。あまりにも嬉しくて」


「なんで急に姿を消す!笛を渡しておいたのに、なんですぐに吹かなかったんだ!」


「ポケットに入れてたのすっかり忘れてて。あんな小さいと存在感ないじゃない」


「本当に正直者だな!!もうちょっと嘘ついてもいいぞ?!それ、結構な力と時間ないと作れないんだからな?!」



伊鞠くんが怒ってるんだか泣いてるんだか分からない表情をしたかと思えば、やれやれと首を振る。


ちょこちょこと部屋の様子を見渡し、私の足の鎖の存在に気づくと人差し指を突き出したかと思えば鎖が粉々に砕けた。


あんなに床に叩きつけても何ともなかったのに……


遣いとは言っても、伊鞠くんもきちんと力を持つ者だと言う事を改めて知る。


最初から伊鞠くんいてくれればこの状況変わってたかもしれない。