壁に寄りかかりながら扉の前まで移動すると、扉の隙間から微かに風が流れ込んでくる。
思い切って扉を叩いて助けを呼んでみても、誰も何も反応がない。
分かりきってはいた答えだけど、少し怖い。
このままここから出れなかったらどうしよう。
ううん、そんなマイナスな事なんて考えないで、千代。
今は考えるの、これからどうするかを。
攫われたってことは確かなんだから、ここはもしかしたら私の住むべき世界じゃないかもしれない。
攫われた……ってことは、私の力がほしいからってことだよね。
なら、ここに来る可能性は十分にある。
扉が開かれた瞬間を見計らって外に飛び出せば……!
「なんて運動神経まあまあいい位の私が、そんな上手くいきっこないか……」
ため息をついてズルズルと壁にもたれ掛かりながらしゃがみ込む。
肩に入れていた力を抜くと、体が一気に軽くなる。
ジャラジャラとわざと鎖を揺らしては、地面に叩きつける。
意味のない行動にぼうっとしつつ、何度か繰り返した。