夜明けと共に何やら外から音が聞こえて、ゆっくりと意識が覚醒していく。
まだ薄暗い部屋で布団から出て、障子を開ける。
見る限り何かあるわけでもないのに、音はちゃんと耳に届いてくる。
窓を開けて清々しい空気を肺いっぱいに吸うと、頭が冴えてくるのが分かる。
「ん?」
身を乗り出すようにして音のする方を見つめる。
白い何かが、向かいの家の倉庫の横でゆらりと揺れている。
カツンカツンと聞こえてくる音が大きくなって、思わず目を見開く。
ゆらりと揺れるその白い何かは、徐々に形をハッキリさせていく。
ここからだとあまりハッキリは見えないけど、背丈はまだ小さくてか細い体。
長い黒い髪はその顔を見せてはくれないのに、しっかりと視線を感じる。
ゴシゴシと目を擦って見直すけど、ちゃんとそこには……1人の女の子がいる。
すると突然鳥肌が立って寒気が止まらなくなる。
『……い……ん――た……け……』
この距離でか細いあの声が聞き取れるはずがないのに。
髪の毛の隙間から見えたその瞳と目が合った次の瞬間――