けど、そのお盆はふわりと宙を舞う。


不思議な力でもなく、誰かの手によって。


今日の私どこかおかしいのかなあ……


ため息を一つ着くと、くすりと笑う声。


はっと上を見上げれば、夢の中の住人がそこにいた。



「遅いぞ、童。待ちくたびれた」


「よっ嘉さん?!」



パクリと一口肉じゃがのジャガイモを口に入れて、味を確かめる。


驚いてはいるけれど、反射的に立ち上がって嘉さんからお盆を奪う。



「なっなんで私の家にいるんですか!!」


「なかなかに美味だな」


「聞いてます?!」



どこか勝ち誇った笑みを浮かべて居間の中へと進んでいくと、その先に見えた光景に私は頭痛がし始める。



「あらあら、千代が?」


「ああ。いい才能の持ち主だ」


「な、なんで伽耶ちゃんまで……」


「私もいるからな!!」



伊鞠くんまでも自分を主張してくるけれど、一人増えた所で今のこの状況はため息しか出てこない。



「キュー」


甘えたような声で、足にスリスリと顔を押し付ける鬼毅牙までもいる。


夢じゃなかった、現実だったんだ。



「おや、千代。おかえり」


「お、おばあちゃん……」



流石マイペース……この状況にも動じないどころか受け入れてる。


というか私の帰ってきてたの気づいてなかったんだ。


ため息しか出てこないこの状況に、またお盆が消えて嘉さんが私の顔を覗き込んできた。