何か言いかけようとする嘉さんだけど、何も言ってこない。


すると近づいて来たのは嘉さんじゃなくて、伽耶ちゃんだった。


そっと浮かび上がり面白そうなものを見る目で私を見ると、震える妖の体にそっと触れる。



「……まさか、浄化させるとはな」



驚きが混じったその言葉と共に伽耶ちゃんが笑った。


そして、私の頭をぽんっと撫でる。



「流石は白憐の血を引くだけある。まさか、鬼毅牙を遣いにするとは前代未聞だ」


「伽耶ちゃんこの子……」



倒さなきゃいけないの?伽耶ちゃんもそれを求めているの?


そう聞こうとしたけど、その前に伽耶ちゃんの指先が私の口に触れる。



「こやつに害はない。見ろ、あれだけの瘴気の立ち込めた森が消えた」



伽耶ちゃんが示す方をゆっくりと見下ろせば、そこにはここに来る前に見た白い花々が泉を囲んでいる。


あれほど濃くて前も見えない程の霧も、黒い木々もどこにもない。


綺麗な森があたかも昔からあったかのように呼吸をしていた。