ゆっくりと頭の上に手を伸ばすとほんのりと暖かいその温もり。


そのままその温もりを抱き上げて目の前に持ってくる。



「キュー!」



可愛らしくバンザイをしてつぶらな瞳を輝かせる……見覚えのある妖。


真っ黒だった体は白の強い灰色へと色を変えて、あの怖い感じは何一つない。


でも、さっき見た時はあんなに大きかったはず。


じっと見つめてくる妖に恐怖心は生まれてくるどころか、愛嬌しかない。



「阿呆!!そいつはっ!!!」



嘉さんが慌ててこっちへ向かってくると、ビクリと体を震わせ身じろぐと慌てて私の腕にしがみついた。


怯えるその目を見て、私から妖を奪い取ろうとする嘉さんから庇うように抱きしめた。



「おい……童、何してるんだ!さっさとそいつを寄こせ!」


「この子、怖がってます」


「そいつはさっきまでいたあの鬼毅牙だぞ!」


「その、き……鬼毅牙?というものが私には分かりません。それにこの子には害があるとは思えませんもん!」



ギュッと抱きしめる力を強めると、弱々しく妖―鬼毅牙が鳴いた。


そっと顔を胸に埋めてくるその姿にきゅんとしつつも、嘉さんをじっと見つめた。


何か悪いことをしたわけでもない。


確かに私達を襲って、嘉さんのことを傷つけたのは紛れもなく事実。


でもそれはこの子に取っては自分を守るため、森を守るために取った行動だとしたら。


私達と同じことをしていて咎められるのがこの子だけっていうのはおかしい。