慌てて吹っ飛んできた伊鞠くんは嘉さんと同様、頭が上がらない存在らしい。


伽耶ちゃんに指示を受けると嘉さんの元へと向かうが、嘉さんが振り払う。



「俺に構うな伊鞠!!」


「でっでもぉおお!!」


「しっかり治療しろ伊鞠!!」


「んもぉおお!!」



そこから始まった謎の鬼ごっこに私は思わず笑う。


怖かったけど、なぜかはわからないけど。


どうしてかこの空気が落ち着く。


まだ出会って少ししか時は流れていないのに、なんでだろう。


あれだけ構えていた体の力がすっと抜けていく。


それでも体の奥底に眠る熱はまだ冷めない。


ふと目が合った嘉さんが微かに笑ったような気が――



「んむぬっ!!」



急に真っ黒になった視界に、なんとも言えない変な悲鳴のような声をあげて顔面にへばりつくようにいる何かをバッと剥がした。


剥がしたものを見ようと辺りを見渡すけど、見当たらない。


首を傾げたその時、頭の上からキューと可愛らしい何かの鳴き声が聞こえてくる。