「帰るの?」
「…そうですけど…な、何か…?」
コイツ、またしらばくれる気だな。
そんな手は俺には通用ねぇって分かってねぇの?
ぽん、と花蓮ちゃんの肩に手を置いてそっと耳に顔を近づけて小さな声で言葉を発した。
「逃がさねぇから」
「なっ…!」
みんなには聞こえないように囁き、花蓮ちゃんを放っておいて、歩き出す。
当の本人、花蓮ちゃんは放心状態で少ししてから俺の少し後ろを俯きながら歩いている。
はぁ…ほんとめんどくさいのに
なんでこんなに構いたくなる?
「迷子にならないでね」
「…もういっそ、迷子になって先輩から逃げたい」
ぼそっと彼女の口から呟かれた言葉を俺は聞き逃さなかった。
へえ…なかなか言うじゃん。
やっぱり、俺の思った通り面白いヤツ。
「んじゃあ、お望み通り
迷子になれるような場所連れて行ってあげるよ」
俺がそう言って、花蓮ちゃんの腕を掴んでグイグイと歩き出すと花蓮ちゃんは慌てたように「う、ウソです…!先輩と行きます!!」と言った。