確かに王子様キャラのときは基本は“さん”付けとかだけど素の俺はそんなの気にしてないからな。


いつか、花蓮ちゃんを呼び捨てにする日がくるのだろうか?


いや、来ねぇな。
俺が惚れるわけねぇもん、こんなチビに。


そして、連れてきたのは俺たちが出会った場所の人気の少ない廊下。


ここなら、会話も滅多に聞かれたりしない。
昨日の告白のあとのことを花蓮ちゃんに聞かれていたことは例外として。



「あのね、話があってきみを呼んだんだ…って今にも泣いちゃいそうだね」



花蓮ちゃんと向かい合って目が合った瞬間気がついた。
彼女の瞳にはうっすらと涙の膜が張られていた。


余程、俺のことが怖かったのか?
ったく……マジでめんどくさいヤツに絡んじまった気がする。



「な、泣いてなんか無いです…!」


「そう。なら僕が今から泣かせてあげようか?」


「へっ…!?
わ、私は泣きませんよ…!絶対!」



強がって花蓮ちゃんはそういうけど、ぱっちりとした大きな瞳が段々と潤んでいくのが分かる。


それが妙に面白くてこみ上げてくる笑いを堪えるのに必死。