財布をもって、ドアを開けた。

「「…あ」」

同時に出てきたのは、お隣の健吾。お互い笑顔で会釈する。

「…こんな時間にお出掛けですか?」
「…はい、主人が部下を連れてきてて、ビールが足りなくて、コンビニに。あ、煩いですよね、すみません」

華の言葉に、健吾は首をふる。

「…ここの防音設備はなかなかですよ。全然気になりません」
「…良かったー。三宅さんも、お出掛けですか?」

「…はい、タバコを買いに、俺もコンビニに。良かったらご一緒しませんか?女性一人で夜道を歩くのは危ないですから」

『女性』扱いなんて、いつぶりか?

「…女性だなんて、こんなオバサン、誰も襲いはしませんよ」

なんて、笑いながら言う華は歩き出す。その横に寄り添うように健吾も歩き出した。

「…華さんはわかってないですね。自分の可愛らしさに」

健吾の思ってもない言葉に、華は頬を赤らめた。

「…お世辞なんて良いですよ」
「…お世辞じゃありません。俺はいつもそう思ってます」

健吾の真剣な顔に、華は笑って誤魔化した。

一緒にコンビニに行って、買い物をして、また一緒にマンションに帰る。

その途中、華はなにかにつまずいて、よろけた。

だが、健吾に抱きしめられ、事なきをえる。

「…ご、ごめんなさい、ありがとう、助かりました」

そう言って離れようとした華だったが、健吾は抱きしめる腕の力を緩めてくれない。

「…三宅さん、」
「…ずっと、こうしていられたらいいのに」
「…え」

驚いて見上げる華を、健吾は優しい眼差しで、見下ろす。