健吾の手が、それを止めた。

挟まりそうになって、華はギョッとしながら、慌ててドアを止める。

「華さん!」
「…な、なんですか?驚くじゃないですか。危うく三宅さんの手を挟むところでした」

そう言ってため息をつく華。

「…すみません、驚かせて。あの、このお返しは必ず」
「…いえいえ、気にしないでください。誰かに食べてもらえるだけで、私は嬉しいから」

そう言って微笑む華に、健吾が胸をキュンとさせたことなど、華は知るよしもない。

華は、健吾に会釈すると、自分の部屋のドアを開けて中に入ろうとしたが、なんだか視線が気になって横を見ると、健吾が自分に手を振ってるではないか。

なんだか子供みたいだな、と微笑ましい気持ちになって、華も笑顔で手を振り返した。

「…三宅さんって、イケメンなのに、可愛いところもあるのね」

と、言葉に出すと、尚更可笑しくなってきて、クスクス笑いながら、部屋の奥に入っていった。

…。夕方。

鈴が帰ってくるも、宿題を持ち、急いで出かけていく。

下の階の同級生の家に宿題をして、遊んで帰ってくるのが鈴の毎日の日課だ。

正樹はサッカー部に所属していて、帰りはいつも、午後7時以降。

和也は毎日帰りがまちまちで、華は、サラリーマンなのだから、仕方ないと思っている。

…こんな変わらない日常に時々和也が部下をつれて帰ってくると言う珍な日がある。

突然それをするので、華はヒヤヒヤさせられるが、毎日おかずを沢山作ってるのでまず心配はないのだが。

「…、お父さん、ビール足りないから買ってくるわね」
「…おー、頼む」

珍しく、ビールのストックが足りなくて、華は、近くのコンビニに買いにいくことに。