「…沢山作ったので、出来上がったら、少しお裾分けしましょうか?」
「…ホントに?いいんですか?!」

そう言ってまた身を乗り出す健吾に、また、華は慌てて体を押した。

「…だから、落ちるって!お昼は家にいます?」
「…はい。在宅ワークなので、今日は家から出る予定はないです」

その言葉にニコッと、笑った華は、頷いた。

「…わかりました。それじゃあ持っていきますね…さ、布団干さなきゃ、じゃあ、また後で」

華の言葉に、健吾も笑みを浮かべた。

「楽しみにしてます」

そう言うと、お互いそれぞれの用事を始めた。

変わりない日常に、鮮やかな明るい色が加わった華は、なんだか心が踊った。

…用事を済ませ、時計に目をやると、お昼前。

華はタッパーに出来上がった煮物を入れると、健吾の部屋のインターホンを鳴らした。

「…はい…あ、本当に持ってきてくれたんですね」

…その場だけの言葉だと思ったのか?と、華は思いつつも、それを笑顔で手渡す。

「…さっき、約束したじゃないですか。後、これ、大根のサラダなんですけど、よかったらどうぞ」

料理好きの華は、毎日沢山のおかずを作る。かといって、そんなにお金もかけず、毎月低予算で食費は切り詰めている。

「…こんなに頂いていいんですか?」
「…えぇ、いつも余るほど作るので、気にせずどうぞ」

華の言葉に、健吾は満面の笑みを見せた。

「…ありがとうございます。頂きます!」

健吾の笑顔はとてもカワイイと、華は思った。

「…それじゃあ」

華は、そう言うと、ドアを閉める。…が。