「…三宅さん」

顔は引っ込めて、赤くなった顔を隠しつつ、華は健吾に問う。

「…何ですか?」
「…さっき、何であんなことしたんですか?」

…華の問いに、健吾は答えない。

『意味はない』んだと、華は思った。

「…すみません、気にしないでください。それじゃ」
「…華さん、毎日凄く頑張ってるから」

…それは聞いたけど、と、華は思った。

…って言うか、下の名前で呼ばれた。と、更に顔を真っ赤にした。

「…旦那さんとか、子供達のために、毎日家事や育児を一生懸命頑張ってます。俺が華さんを見かけるとき、貴女はいつも走ってる。こうやって、家事も嫌な顔ひとつしないでやってしまう。最高の奥さんで、お母さんだって、いつも思ってました」

…素直に嬉しい。そう思った。誉められたことなんてなかったから。こんなの、専業主婦は当たり前だってみんなも、私も思ってた。

…でも、どこかで、ありがとう、って、一言で良いから言ってもらいたかったのかもしれない。

「…三宅さん、ありがとうございます。そんな事、主人にも、子供達にも、言われたことないです」

華は素直に礼を言った。

「…華さんの家族は、もっと貴女を敬うべきだ」
「敬うなんて、そんな。私は専業主婦です。今やってることは当たり前の事だし、私も楽しんでますし」

…それもまた、華の素直な気持ちだ。

「…華さんは、家族を愛してるんですね」
「はい!目に入れても痛くないほど愛してます」

華はハッキリと嬉しそうにそう言った。