大きな溜め息をついた華だったが、ふと目に留まった時計にハッとなった。

「…いけない!試合始まっちゃう!」

今日は正樹のサッカーの試合。小学校からずっと続ける正樹を、華はずっと応援してきた。

段ボールから大きなお重を取り出すと、急いで台所にいき、出来たおにぎりやら唐揚げサラダを詰め込むと、大きな鞄に詰め込んだ。

「…お父さん、行ってくるわね。鈴は、まきちゃんちでお昼食べるから気にしないで。あ、お父さんのご飯はテーブルの上に置いてるから。行ってきます‼」

「…おー」

リビングのソファーに寝転ぶ和也の手だけがヒラヒラと見えた。

華はフッと笑みを浮かべ、時計を見てまた慌てだし、玄関のドアを勢いよく開け、走り出した。

…、正樹はもう高校生。応援は静かに頼むと言われていたけど、ついつい大きな声で応援してしまう華。

「…止めろって言ってるのに」

1年なのにスタメンの正樹は恥ずかしそうにボヤく。

それを先輩がポカンと頭を小突く。

「…良い母さんだろ?毎回みんなに弁当まで作って来てくれて、感謝しろ」

「…はぁ」

強豪チーム同士の試合に、応援は大盛り上がり。

…大きな声で、一生懸命応援する華を微笑ましく見守る人物がいた。

…健吾だ。

仕事のため、外に出ていた健吾は、帰りはのんびり歩いて帰ろうと、河川敷を歩いていた。

そこにたまたま、サッカーの試合をしていて、学生時代サッカーをしていた健吾が、それを見ていたら、これまたたまたま応援する華を見つけたのだ。