「あ、圭矢君だー♪」
テレビの音が聞こえていたのは、あたしだけじゃなかった。
松本君のそばで、圭矢を観て懐かしそうな声をあげる菜摘。
「え、菜摘ちゃん知ってるの?」
そんな菜摘を見て驚く松本君。
そりゃそうだよね。
芸能人を知っている、そうなれば大体の人は気にはなると思う。
「あ、うん。圭矢君がまだ高校生の頃だったんだけどー」
そう言って、菜摘は言わなくて良い事までもベラベラと話し出した。
あたしが、圭矢を好きだった事を――。
「えー。上原さん、KEIが好きだったの? 何か凄いよね」
「でしょー? 芸能人になった人を好きだった、それだけで凄いよね」
芸能人。
その言葉が、またあたしに重く圧し掛かる。
「芸能人になってなかったら、雫が彼女だったのかもしれないよね」
笑って言う菜摘に、何も言えなくて。
本当は
『やめてよ』
そう言ってしまいたい。
この話は、しないで欲しい。
だけど、菜摘に嘘ついてるのは、あたしだから。
秘密にしてるから。
何も言えなくて……作った笑顔。