バイトへ行く為に、眠い目を擦りながら朝から準備をする。


夏も終わりに近づいているのに、朝から今日も暑い1日だというかの様に蝉は元気よく鳴いていた。



『DROPと言えば、今や10代から20代女性のアイドルですからね。このスキャンダルは話題でしょうねー』



リビングを通ると聞こえた、蝉といい勝負なくらい朝から元気いっぱいの甲高い声が耳に入ってきた。



観ない。

聞こえない。

芸能ニュースなんて、あたしは嫌いだもん。



そう思っても自然と耳に入ってくる声に、いつのまにかその場に立ち尽くしていた。




『KEIさんと杉下奈央さんは次の月9の主演も決まってて、その話題性だとも言われてますけど』

『そうですよね、だけど目撃情報も多数入ってまして。都内の有名な御飯屋さんで食事していたとか…』



壁にかかる時計を見ると、丁度どのチャンネルも芸能ニュースの時間。



『杉下奈央さんのマンションに、KEIさんが通っているというくらいですから』



へぇー。
立ちっぱなしのあたしは、まるで他人ごとかの様に、テレビの中で盛り上がるレポーター達を観ていた。


“杉下奈央”


圭矢は“嘘だから”って言ってくれた。


勿論、それを信じてる。



だけど、何か。
胸の奥につっかえてて。



気にしないでいよう、そう思っても……気にしてしまうあたしがいるんだ。