「菜摘さんは、彼氏いないってたけど。言ってねーの?」
さっきの真顔は見間違い?
そう思うほど巧はいつも通りで、返ってあたしの方がアタフタしてしまう。
「え? あー、うん」
「ふーん、何か訳アリ? って不倫とかじゃねーだろな?」
驚いた顔をする巧に、おもいっきり首を振るあたし。
ま、まさか。
不倫なんてしてないよ!
ただ、圭矢が芸能人。それだけだよ。
「じゃあ、何だよ?」
「……」
『彼氏が芸能人の“KEI”なんだ』
なんて言えるわけがない。
そのまま俯いてしまった。
暫く流れる沈黙が苦しかったけど、言う事なんて出来ない。
告白してくれてるんだから、ちゃんと理由は言うべきなのかもしれない。
だけど……だけど、言えない。