「やっぱ、元気なくね?」
やっぱりバレてたんだ。
だけど、あたしは
『うん』
なんて言えない。
その後の理由も言えないもん。
だったら中途半端に何か言っちゃ駄目なんだ。
「そんな事ないよー」
精一杯明るく言ったのに。
「……嘘つくなよ?」
見透かした様に、言わないでよ。
歩くあたしの腕を掴んで、その場へ止める。
ラブラブモード満開の菜摘は、あたし達がついて来てないのに気付かず、信号を渡ってしまった。
青信号がチカチカと点滅をして……赤へと変わった。
停まっていた車がゆっくりと動き出す。
それを目で追ったあたしに、ゆっくりと巧が口を開いた。
「お前、何悩んでんの?」
「だ、だから。何も悩んでないって」
笑って見上げた巧の目は、何故か怒ってる様に見えたんだ。
「笑うなって」
何で、何で巧にそんな事言われなきゃいけないの?