「辞めて欲しいって言わないの?」



今なら、本当の事を教えてくれるよね。


もし……今、辞めて欲しいって言われたら俺……



「馬鹿! 言わないから。絶対言わない!

圭矢、仕事好きでしょ?
練習だってイッパイしてるじゃない。

私は、どっちの圭矢も好きだから。
だから言わない……言えないよ?」



そんなところまで見てくれてたんだ。

俺が仕事を好きなのも知ってたの?


言わない……言えない。


それは本音だよね。

なら、俺は辞めたっていいよ?

仕事より、好きな人を取る俺は子供だよね。
でも、それくらい雫を好きになってたんだ。



「ファンの子に怒られるよ?
圭矢のファンの子の気持ちナメないでよね?」



どうして、そんなに強いの?

もし俺だったら……。


ううん、違うね。



雫だからだ。



俺が好きになった雫だからだよね。

雫には、“選ぶ”なんて選択肢はないんだ。



どっちも。なんだよね。