「……雫」
「ん?」
「他に……男いないよね?」
弱弱しい圭矢の声。
こんな声、初めて聞いた。
抱きしめられてるから顔が見えなくて。
でも、ドキドキと心臓の音は聞こえてくる。
「いるわけないよ? 私は、圭矢だけが好きなんだもん」
さっきよりも早くなった心臓。
ドキドキ煩いのは、あたしの心臓なのか圭矢の心臓なのか。
顔も見えないから、言えた言葉。
真っ赤な顔はあたしだけ、それとも圭矢もなのかな。
「どうして? どうしてそんな事思ったの?」
「……」
「圭矢?」
私の質問に答えない。
でも、別に何とも思わない。
だって、圭矢が質問に答えてくれないなんて、いつもの事だし。
今日は、いっぱい貰えた言葉がある。
それだけで十分だから。
それだけで、信じれるからね。
でも、たまにでいい。
こんな風に言葉をちょうだいね。
それだけで、また我慢も出来るし頑張れるから。