そのまま菜摘を謝って、急いで走って向かった圭矢のマンション。
今日は、いつもみたいに
『早い』
って言われなくて。
しかも、さっき思った通りに機嫌悪くて。
どうしていいかわからなくて、この間来た時に干したままの洗濯物をハンガーから外した。
「圭矢、ご飯は食べた?」
やっぱり耐えれない沈黙に聞いてみても。
「……食った」
それだけ。
この異様に重い空気は何?
コンサート後だし疲れてるのかな。
あっ!
なら、あたし来ちゃ駄目だったんじゃない!?
チラッと見た圭矢と目が合いドキッと音をたてた心臓。
「今日、歌詞3回も間違えた」
「えっ? 間違えたっけ……えぇ?」
うわっ!
ヤバッ!
あたし、何言ってんのよ!?
どうしよう……。
慌てて背けた顔をゆっくり圭矢に向けると、笑ってない無表情で私を見つめてた。