あっという間にアンコールを向かえ、隣で菜摘は哀しそうにぼやいていた。



あたしは、たまに2階を見上げる圭矢にドキッとして。

あたしを見ている……あたしに気付くわけもない圭矢から目を逸らしたりして。



“夢”



そう、あたしも貰ってるんだ。



圭矢が見つめてくれてるんじゃないかって、気付いてくれているんじゃないかって夢を……。



客席から見つめてると、ファンっていいな。って思える。

ドラマのキスシーンだって、自分を女優さんに置き換えれる。

CMのグロスだってつければ、触れられてる様に感じれる。

コンサートだって私を見てくれたかもって喜べる。

この会場に来れば、圭矢に近づけて夢を見れて。

この会場を去れば、いつもの生活で現実の彼がいて。

そんな2つの世界を楽しめるなんて最高かもしれない。



あたしは、どうして……圭矢の“彼女”なんだろう?



本当に……彼女と言っていいんだろうか。

そんな馬鹿げた事を思ってしまった。