家に帰ったあたしは、いつもの1番電波の良い場所に携帯を置く。



これだけは、どんな時も欠かさない。



そんな時、菜摘からの電話。

『あっ雫? あれ来たよー』

なんて弾んだ声で言うけど、あたしにはサッパリわからない。

『しかも2階の1番前』

……次の言葉もよく理解出来ない。


何が“来た”の?


そう思ったあたしに思いがけない言葉。

“圭矢のチケット”

そうだ!

圭矢は、絶対にコンサートに来ちゃ駄目って言うから、菜摘に頼んだんだった。



全く忘れていたあたしに菜摘が

『人に頼んだくせに忘れてるなんて~』

なんて怒りながらも

『圭矢君の事好きだったし神様からのプレゼントだよっ』

そう言いながら、取れたチケットを自慢していた。



ファンクラブとはいっても、絶対にチケットを取れるわけじゃないらしく。

外れる時もあるらしい。



それに2階席の1番前、その席が菜摘を余計に興奮させていた。