「沙良ちゃんが無自覚なお陰で、南夏は沙良ちゃんと出会えたじゃん」


「…っ!」


それは間違いではないけれど。
だけど…。


「南夏がボコボコにされたあの日、沙良ちゃんが南夏のこと危険だって思ってすぐに逃げちゃってたら、南夏こそ今ここにいなかっただろうし、もちろん沙良ちゃんとも付き合えていないわけでさ」


「……」


「沙良ちゃん可愛いすぎるから心配になるのもわかんねーことはないけど、でもそれが沙良ちゃんのいいとこでもあるわけだから信じてやれば?」



「ムカつく」


俺は、音楽の目をまっすぐ見てそういう。


「は?」


なんでバカな音楽に、俺が慰められなきゃいけないんだよ。


ムカつく。


ほんとムカつく。


それに言ってることド正論だし。


「人の女のことは気持ち悪いくらいわかってるみてぇだけど、自分の彼女がなんで怒ってんのかはわかんねーのな」



「うっ!今それ言うか!普通ありがとう我が親友よ!って言うところだろ!」



「きしょい」


「幼なじみに向かってきしょい言うな!」


「うるせ…」


そう言って、自分の耳を塞ぐ。



信じてやれ…か。