「ちょっと南夏!こんなとこで沙良のこと襲わないでくれる?」


ベランダのドアが開くと、そこには幼なじみの楓がこちらを睨んでいた。


「…はぁ?襲ってねーよ」


彼氏が彼女とイチャイチャしてて何が悪いんだよ。


「とにかく、女子でご飯の支度するから、男どもは先に海で遊んでてくれる?ほら、沙良行こっ!」


「あ、うん!じゃあまたね、黒川くんっ!」


楓に腕を掴まれた沙良は、サラサラの栗色の髪を麦わら帽子の下からなびかせながら、別荘の中へと入っていった。



全く…どいつもこいつも…。


藤枝がいなきゃ、もっと楽しく過ごせていたのに。


あいつのあのいかにもわざとらしく沙良に触れる感じ…絶対沙良を狙ってるようにしか見えない。