スタスタと歩き始めた先生を慌てて呼び止めようとしたら、サクラ生と声が被ってしまった。

重なった声に反応して、バッと振り返ると、大きく開かれたこげ茶色の瞳に私の姿が映っている。


…なんだか気まずい。


私を見つめるこげ茶の水晶が"あの人"の色と似ているのに気がついて、私は思わず目を反らし、この事態を招いた張本人を睨んだ。


そんな私を見ても先生は別段揺らぐ様子も見せず、ククッと軽く笑うと、

「後は若いお二人さんに任せるわー」

なんて無責任に言い放ち、右手で缶コーヒーを握ったまま振り返りもせずに校舎へと戻ってしまった。


え、何この状況?!

私はどうしたらいいの?!

戻る?教室に戻っちゃう??

先生は揉めてませんでした、って、それで終わりでいいんじゃないかしら?

うん。

戻ろう。


「あのさぁ?」