「そっか、俺の事がそんなに好きなのか」
「はい。死んでもいいくらい大好きです!」

「おい! 一億円といい、なんかすごい大げさだな」

 揶揄してもノゾミの真剣な眼差しに圧迫され、俺は怯んでそれに負かされた。

「わかった。面白そうだ。付き合ってやるよ」
「えっ! ほ、本当ですか。本当に私と付き合ってくれるんですか?」

「ああ」
「あ、ありがとうございます」

 ノゾミは思いっきり涙を流して、体を震わせて全力で喜んでいる。
 漫画で表現できるくらいの、大げさな泣き方だった。

「おい、泣くことないだろう」
「いえ、嬉し泣きです。もう思い残すことがないくらい、ハッピーなんです」

「お前さ、かなり感情的だな。セリフも大げさ過ぎる」

「はい。一生懸命になるってすごく大切なことなんだってわかったから、思いっきり私は感情を伝えたいです。後悔のないように」

「一生懸命……後悔のないように……」

 なんだかもやっとして、俺は自分が責められているような気になってくる。
 悲観的な俺には、ノゾミのこの言葉が妙に突き刺さる。

 どうせ──
 俺なんて──

 抗えないものに屈服する方が多い俺には、勇気を出してまっすぐと突き進んでくるノゾミに圧倒されまくりだった。

 付き合うと言ってしまったが、このまま彼女に促されてやり込められるのもなんだか癪だった。

「で、早速だけど、俺と一緒に帰る?」
「は、はい! お、お願いします。隣に立ってもいいですか?」
「いいけど」

 身長180cmの俺の傍に、ノゾミが立つ。
 大体160cmちょっとくらいか。

 ノゾミはぎこちなく、まだ顔を真っ赤にさせたままだった。
 無理をして俺に近づこうとしてくる。

 俺が歩き出せば、歩調を合わせ隣にピタッとくっ付く。

 まるで離れまいとしているコバンザメのようだった。

 暫くそんな感じで歩いていたが、周りの女子達が俺たちを見ながらコソコソ何かを話しているのが目に付いた。

 自分でいうのもなんだが、学校ではそれなりに知名度はあるし、告白される事も後を絶たなかったが、基本取っ付きにくい雰囲気を持ち、愛想も悪いから女と一緒に居るところは稀といってもいい。

 別に何を言われても気にしないが、俺もまたおかしな気分だった。

 あれだけ究極の愛の告白をしてきたノゾミだが、本人は黙りこくったまま、ひたすらぎこちなく俺の隣を歩いているだけだった。