「赤石くん!」


そう呼び止めると柔らかそうな笑みをつくった。


唯一私と喋る男子だ。


私は彼の耳元でそっと囁いた。


「バラされたくなかったら放課後来てね?

 もちろん一人で。」


彼は汗を滲ませながら笑った。


ほらこれで彼も獲物の1人。


「こんにちはー赤石くん♡」


私は彼の方に腕を置くと


「今日こそは連れ居ないよね?」


疑うような視線を向けると彼は自信満々そうだった。


「そ、ならよかった。」


「ね、」


彼は呟いた。


「最後にお前の俺で良かったんじゃない?」


「どういうこと?」


砂利を蹴飛ばしながら後ずさりする。


「そのまんまんだよ。」


彼は背中からカッターを取り出す。


「なんて言うと思った?君こそ私が最後の人だよ?」


「カッターなんて甘すぎない?


なんてね?嘘だよ♡」


反射的に彼の体へ抱きつく。


彼は一瞬だけ怯んだ表情を見せる。


「さようなら。君の笑顔が一番嫌いだったよ。」


「うぅー…」


赤石は痛そうに呻く。


「助けてあげよっか??」


「お願いします。」


私は少し考えた表情をするとポンと手を叩く。


「いいよ。貴方が動かなくなったらいいよ?」


私は彼のお腹を突く。


「きっとそろそろ動かなくなるよ。良かったねー。」


彼は顔を無理やり歪めると苦しげに言葉を出す。


「そう思って…準備…して…お……いたよ…」


「こんにちはー。坂原さんっ♡ ただで済むとは思わないでね?」