結局わたしたちはその日、つまりお兄ちゃんたちが
高校最後のコンサートで演奏している日に、試合に負けた。

健闘むなしく見事に散ったわけだ。

わたしはといえば、最後まで試合に集中することが出来なかった。

お兄ちゃんのことから離れよう離れようとすればするほど
心は「そこ」に行く。

もう出番は終わったのだろうか?それともこれからか?

なにをやるんだろうか?何曲やるの?失敗はしてないだろうか?

上手にできたのか?そして最後は「ここ」に行く。

「ナディアは来てるのだろうか?」と。

どうにもできない。そんなことだったから試合が終わったあとの
虚脱感というのはあきらかにセミの抜け殻よりもすごかったはずだ。

達成感など「カケラ」ほどもなかったのだ。

ただ「終わった。三年間の『部活』が」それだけ。