「あんな素敵なお嬢様に思われるなんて、いったいどんな男性なのでしょうか?」
 

 フェルナンドはケイトリンを見送ると、本棚に向かって言葉を続けた。


「それで、彼女をどうされるおつもりですか? レイフ王子」


「俺自身がどうなるかわからないのに、どうするもこうするもない。第一、ケイトの好きな男が俺であるとは限らんさ」


 男の声と共に、カタンと音がすると本棚が横に動いた。その奥には壁ではなく空間が続いている。フェルナンドに返事をしたのは、隠し部屋から現れたレイフだった。


「ギースの話では、あなた方は相思相愛ではないかということですがね」


 フェルナンドが咎めるように視線を向けると、無表情なレイフと目があった。


「そんなことより、今夜やるぞ。ギースにも伝えておけ」


 その様子を見て、フェルナンドはため息をこぼした。


「先ほどの言葉は、あなたへのものだったんですけどね。大切な女性を守れないで、この国の問題を何とかできますかね」


 フェルナンドの質問には答えず、レイフは再び本棚の後ろに姿を消した。