フェルナンドは、地方でどんなに頑張って生産性を上げても、税の高さで儲けにならないこと、そのため雇われている人々の賃金が安く抑えられていること、地方で食べられなくなった貧民が仕事を求めてラシェルにやってくること、それでも食べられずに子どもたちが捨てられること、子どもたちは生きるために盗みを働いていることなどをわかりやすく教えてくれた。


「貧しい民衆からしたら、あなたのお父上が、悪者に見えるのは無理のないことかもしれませんね」


 暗い顔になるケイトリンに、フェルナンドは申し訳なさそうにつぶやいた。


「今まで何も知らずに安穏と暮らしていた私も、悪者の一員ということですね。言いにくいことを教えてくださり、ありがとうございました」


 ケイトリンは静かに立ち上がり頭を下げると、部屋の扉に手をかけた。


「ケイトリン」と呼ばれ、フェルナンドの方を振りかえると、彼は微笑んだ。


「相談したいことは、それだけですか?」


「え?」


「まだ、恋の悩みを聞いていませんが」


 フェルナンドの言葉に、ケイトリンは戸惑った。


「いえ、あの私」


「せっかくです。すべて話して楽になってはどうでしょう? 秘密はお守りしますよ」


 フェルナンドの笑顔につられるように、ケイトリンは口を滑らせた。


「実は、私・・。気になる男性がいて」


「ファビアン王子ではないのですね」