考え事をしていると、あっという間に城に着いた。通常なら、謁見の間に通されるのだが、ケイトリンを待ちわびていたファビアンが、彼女を出迎えた。


「ケイトリン！　やっと会えたね。舞踏会以来会えなかったから、とてもさみしかったよ」


「お待たせして申し訳ございません」


　丁寧にお辞儀をしたケイトリンの頭が上がらない間に、ファビアンはケイトリンの手を握る。


「あぁ、そんな挨拶は、僕たちの間では不要だよ。婚約者なのだからね。さぁ、君のために豪華な衣装を仕立ててもらおう。国中から一流の仕立て屋を呼んだからね」


　ファビアンは、ケイトリンの手を引くと、大股で歩き始めた。ケイトリンは、引っ張られるようによろけながら歩き始めたが、その速度にドレスの裾をさばききれず「あっ！」と声を上げた。


　躓いてファビアンの背中に顔をぶつける。


「も、申し訳ございません！」


「なんだ、どうしたんだい？」


　怪訝な顔で、ファビアンが振り向く。


「あ、実は昨日あまりよく寝ておらず、足元がふらついてしまって」


　そこでようやく、ファビアンはケイトリンの顔をまじまじと見つめた。


「あれ、そう言われてみれば、なんだか顔色が悪いのかな？ 目の下が暗いような」


「申し訳ございません・・」


「まぁ、いいさ。僕に会えるのが嬉しくて眠れなかったんだろう？　実は僕も興奮して昨夜はあまり眠れなかったんだ。君も見たらきっと感激で泣き出してしまうよ！」