お、おかしいな。


何で私、こんな風にかいとくんと普通に話してるんだろう…?



いつもいつも、人目を避けて生きてきた。


人の視線が痛くて、耐えきれなくて、下ばかり見て歩いてきた。

だから、電柱とか壁とかにぶつかるのはしょっちゅうで。


だけど今、私……。


「…ふふ…っ」



自然に笑ってる。

自然に、前を見て歩いてる。


私を見て、かいとくんが微笑んでくれているのが嬉しい。

私が経験したことのないことを、「しよう」と言ってくれたのが嬉しい。

なんだかかいとくんには、私の中の“絆奈”を見つめられている気がして。


…私の知らない私を、私の知らないところへ連れて行ってくれるような気がして。


おかしいよね。


はじめはあんなに、一緒にいたくないって思ってたのに。


今、あなたとつながっているこの手を、

…離したくないと思っているなんて。