「はぁ…」 今日何度目か分からない溜息は、誰に気付かれるでもなく、宙に消えていく。 気分が上がらないのは、天気が悪いから。 だけじゃない。 「祐奈、」 「うん?」 「あんたの元カレ、もう新しい彼女作ったわけ?」 「はぁ」 うん、とは言わない。 窓の外を指差しながらそう言う京子。 その先にはーーー溜息の原因。 仲睦まじく手を繋ぎ、笑い合うカップル。 重たくて暗い雲とは不釣り合い。