降り止まない口づけに甘い痺れを感じながら、完全に主導権を握っている鬼口部長を薄目でみる。
間近にある整った顔に私も負けじと身を引き寄せた。
頭の隅ではここは会社だってことを理解しているのに、どうしても止められない。
さっきからどのくらいキスを交わしているのだろう。
ソファに倒され、私を見下ろす彼をぼんやりと見つめながらそんなことを思った。
「鬼口部長、」
「名前で呼べよ」
やっとまともに話せたと思ったら、
なに、今度は名前要求ですか!?
「ほら、はやく」
「え、や、ちょっと……」
「無理ならいいけど。その代わり」
一つ含み笑いを浮かべると、顔を寄せてきた。
かと思えば、違う箇所に体温を感じて、思わず体がピクッと跳ねる。
とっさに服に忍び込まれた彼の大きな手を掴んだ。
「ちょっと、何してるんですか!?」
「んー、お仕置き?」
「ハア?」
「なにその言い方。俺一応専務、お前の元上司なんだけど?」
ヒィ!怖い。やっぱまだ健在だ。
この悪魔みたいな笑い方。
え、もう怖いよ。
とりあえず、私どうすればこの状況から逃れるんだっけ?
あ。
な、名前!?
鬼口部……鬼口専務を名前で呼べと?
いやいやいや、無理ですからっ!
いきなり名前だなんて無理だよっ。